大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)1801号 判決

一、(株主名簿に記載のない株主と招集通知)控訴人は、株主総会の株主に対する招集通知は、株主名簿に記載された株主にすれば足りるのであつて、訴外柳原安造ら二十名は株主名簿に記載されていないから、同人らに対し招集通知をする必要がないと主張する。しかし、正当な理由がないのに株主名義の書換に応じない会社は、新株主が株主名簿に記載されていないという事由を主張することができない。したがつて、新株主に対し招集通知を欠く株主総会の招集手続は違法である。そして、柳原安造ら二十名が株主名義の書換を請求し、控訴人がこれを拒絶しているのであるから、右主張のみでは採用することはできない。

二、(記名補充の不能)被控訴人は、控訴人が裏書の不備を指摘することもなく本件株券を預り数日後柳原安造らが催促をなし不備の点があれば訂正する旨申し出でたが理由も示さず猶予を求め同年二月二十五日同人らが不備の点があれば株券の返還を受けて是正する旨伝えたが返還を拒絶しその後同人らが屡々催促しているが名義書換もせず株券の返還もしないで今日に及んでいる。かくては記名の補充は不可能であると主張し、成立に争いのない甲第一号証の一、二、第二号証の一ないし五、第四号証、乙第三十六、四十一号証、弁論の全趣旨により成立の認められる乙第三十五号証、当審証人笠原玄一、同酒井章、同松本三亀男の各証言および弁論の全趣旨を総合すると、柳原安造らは、同年二月十三日に三千三百株、また同月十八日に五千株(以上合計八千三百株のうちに本件株式が含まれている)の株券を、笠原玄一及び酒井章を通じて、控訴人に提出して名義書換の請求をしたこと、控訴人取締役松本三亀男は、控訴会社所定の名義書換請求書用紙を交付して所要の事項を記入させて株券とともに提出させ、二、三日中に名義書換をする旨告げて預かり証を交付したこと、右松本がただちに控訴人代表取締役荒川三治に書換について相談したところ、同人は本件株式は自己個人の所有であつて被控訴人は名義のみのものであると言つて名義書換および株券の返還の拒否を命じたこと、その後右笠原及び酒井において控訴人に対ししばしば書換方を督促し、書換請求に形式的な不備があれば補正する旨申し入れ、また同月二十八日譲渡人である被控訴人がその長男大平猪一を通じ直ちに名義書換をすべき旨の請求をなしたが、控訴人は名義書換をせず、裏書の是正を求めることもなく、株券の返還も拒絶していること、本件株式は荒川三治申請の仮処分の目的となつていないことが認められる。右事実によれば、控訴人は荒川三治と被控訴人ないし柳原安造らとの紛争について荒川三治の立場を有利にするため名義書換も株券の返還も拒否しているわけである。ところで本件株券は裏書に旧株主の記名が洩れているが、その補充権が柳原らに与えられているところであり、補充されゝば適式な裏書となつて譲渡の効が生じ所持人は株式取得に必要な形式的資格を取得し会社に対し譲渡の効力を主張して株式名義の書換を請求し得るに至るのであるから、控訴人としてはすみやかに柳原安造らに旧株主の記名の欠除を指摘してその是正を求めるべき義務があるというべきであるが、控訴人はかゝる措置をとらず、かえつて、荒川三治と被控訴人ないし柳原安造らとの紛争について同人の立場を有利にするため名義書換も株券の返還もしないのであるから、柳原安造らが記名の補充をすることを妨げ、ひいては、名義書換請求手続の是正を阻止防害しているわけである。したがつて、控訴人が名義書換を拒否する理由として記名の欠除を主張することは、自らが違法に阻止妨害している記名補充権の行使を求めることゝなつて、不能を強いることに帰するから誠実に名義書換をなすべき義務に反し、かゝる主張は理由がない。

(渡辺一 岡田 館)

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